カフカ『変身』

変身 (新潮文庫)
朝起きたら、虫になってた。私が、じゃなくて、この本の主人公が。


高校生の時、初めてこの本を読んで、何が面白いのかさっぱり分からなかった。


冒頭で提示される、「朝起きたら虫になっていた」という設定がブッ飛んでいるのはわかるが、そのあとには、ベッドからうまく下りられないだの、このままだと会社に遅れるだの、上司はきっと遅刻したことをネチネチと文句言うんだろうなという心配だの、ブッ飛んだ所が全くなくて、意味がわからなかった。


だってさ、そういう日常生活の細かい心配事だの心の動きだのを記述する小説があるって言うのはわかる。でも、そういう小説のくせに、「主人公は朝起きたら虫」という設定ってのは、無茶苦茶じゃろーが?


でも、カフカっていう名前は有名だし、なにやら難解な本をいっぱい書いているらしいから、これが無茶苦茶なハズはなくて、だからきっと、私の文章解読能力やこの本が書かれた時代背景についての知識が不足しているせいで、私には面白さが分からないのだ。そう思っていた。

それからしばらく経って

それからしばらく経って、NHK でやってたカフカについての番組を見た。


番組の中で、池内紀という鼻声の人が「グレゴール・ザムザは、自分が一匹の毒虫になっているのにも関わらず、遅刻したらどうしよう等という極めて日常的な心配をしている点が面白い。くすくすと笑わずにはいられない」というような事言っていた。これは私にとって衝撃的だった。


そんな読み方でよかったのかよ!


そんなところをくすくす笑いして良いなら、何でもアリじゃんかよ!


「主人公がいきなり虫になっているという設定は、私には未だわからない何らかの難解な意味が込められているのだろう」と、難しく考えるべきだと決め付けていた事に、その時初めて気がついた。そして、そうではない読み方もあることに驚いた。私は、枠をはめた思考しか出来なかった自分や、そのような思考をするように私を仕向けて来たハズの自分を取り巻く何物か(親とか学校の国語教育とか、いろいろ)に、怒りさえ覚えた。


そんなことを、このブログを読んで思い出したのです。

空中キャンプ 「掟の門」
http://d.hatena.ne.jp/zoot32/20060830#p1


この部分が印象的でした。(笑)

いけばいいじゃん、農夫。がーって。


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