正しいことを指摘すること

スタンスはあくまで「ここ禁煙ってご存じですよね」(注意の喚起)、「控えて頂けませんでしょうか」(お願い)の二点。
(略)
ことを荒立てずに、お願いするスキルを磨いてきたつもりが、今度ばかりは通用しなかった。なぜだろう。
リヴァイアさん、日々のわざ: 実体験として「切れる」若者をはじめて見た(喫煙がらみです)。あるいは、「携帯は、待て」と知る。

駅でタバコを吸っていた若者を注意したら、キレて小突いてきた。という話。
注意をした川端さん(リヴァイアさん)は、なんで若者はキレちゃったんだろうなぁ?と疑問に思い、その理由を、そうか携帯電話で話をしている最中に話し掛けたからかも、と、思いあたっているのだけれど、私から言わせれば、相手がキレたのは川端さんが圧倒的に正しいことを言ったからだと思う。
川端さんはたぶん、注意をする際にすごく丁寧な言葉遣いで言ったんじゃないかと想像する。それならそれで余計に、川端さん=正しい人、若者=悪い人、という構図を際立たせる。

「なぜだろう」に、なぜだろう。

具体的に川端さんがどういう言葉遣いをしたのかはわからないけれども、言い方によってはこういう構図を簡単に作り出してしまうことは予想がつくんじゃないかなと思う。こういう構図を作り出した場合に「悪い人」の側に立たされることになった人が、自分の面子を取り繕うためにぶちキレるという可能性もまた、予測されて当然なんじゃないか、と思った。(ぶちキレる以外には「ひどいことを言われた」と泣いてみる、とか、一目散に逃げ出す、とかの可能性もある。)*1
とにかく、自分が「悪い人」として立たされているその構図から、なんとかして脱出しようとするだろうと想像できるとおもうのだけど、それを「なぜだろう」と疑問に思っちゃうところこそ、私は疑問におもっちゃった。

ことを荒立てたいのか?荒立てたくないのか?

私は、川端さんが「ことを荒立てずに、お願いするスキルを磨いてきたつもり」って言っていることに違和感を覚えた。要は、ことを荒立てたくない、ってことでしょ?だとすると……
若者を注意して、相手を「悪い人」という構図の中に追いやること。小突かれたことを警察に対して「そういう事件があったという事実だけをファイルしてもらいたい」と伝えること。若者の住所氏名年齢を聞きそびれたことを嘆いていること。これらを見るに、川端さんはあの時、ことを荒立てたかったんじゃないのか、と感じた。
タバコの煙がいやなら、そこから離れるだけで済ます事も可能だし、警察には「これはうちら二人の問題だから、警察には何もお願いすることは無い」と宣言することも可能だ。「話せばわかる」という態度で、駅でタバコを吸うのはいけないことだと若者を諭すのに、若者の住所氏名年齢は必要ないだろう。

正しいことを指摘すること

川端さんが、駅でタバコを吸っていた若者を注意したこと自体はよい事だし、大人として見習うべき態度だとも思う。これは、「ことを荒立てて」でも、本来はやるべきことなんだろうと思う。
でもそのときは、いくつかのことを心に留めておくべきなんじゃないかと思う。それは、どうしても自分が圧倒的に正しい立場に立って相手を批難する形になってしまうこと、また、それによって自分の溜飲を下げある種の快感を得ることも可能なこと、周囲にほかにも人がいるような場合には、自分が「みんなの代表」になって発言している構図、相手にとっては他の全員から批難されるがの如き構図を、注意された側の脳内に作り出してしまうかもしれない、ということ。そういうことを、心に留めておくべきなんじゃないかと。正しいことを指摘するときには、特に。

リンク

リヴァイアさん、日々のわざ: 実体験として「切れる」若者をはじめて見た(喫煙がらみです)。あるいは、「携帯は、待て」と知る。
http://ttchopper.blog.ocn.ne.jp/leviathan/2006/09/post_93b3.html
煩悩是道場 - 「ことを荒立てずに、お願いするスキル」など存在しない
http://d.hatena.ne.jp/ululun/20060927/shakai060927

*1:ちょっと肩がぶつかったときと同じような軽い調子で「あ、すいませーん」と言って火を消す、という可能性も無いわけではないけれど、そうするのは、そこでタバコを吸うことが悪いことだとまったく思っていなかった相当のアホか、あるいは、自分が圧倒的に「悪い人」として立たされているという構図そのものを無効化するために、わざと軽さを装う、という高度な演技ができるひとなんじゃないかと思う