オーマイニュースのユーザインタフェース

OhmyNews が創刊となって数日経つ。

オーマイニュース(日本版)
http://www.ohmynews.co.jp/

始まったばかりのニュースサイトだということと、「市民記者」と呼ばれる一般の人が書いた記事も載るサイトだということで、興味と期待を持って見ているのだけど、いくつか気になる点があった。気になったのは主に、サイトのユーザインタフェースについてだ。思いつくままに書いておく。

トップページでは、記事のタイトルが尻切れトンボになっている。

サイトのトップページでは、表示される記事のタイトルが長い場合、タイトルの後半部分が省略されてしまっている。

この程度の省略のせいで全く意味がわからなくなるようなタイトルは少ないけれども、やはり、いったん読み始めた言葉が言い切られることなく、フェイドアウトするように消えているのは気持ち悪い。「どの記事を読もうかな?」「今日はどんなニュースがあるのかな?」と、タイトルを一覧した時に「...」と省略されているタイトルが多いと、なんともいえないモヤッと感が残る。オーマイニュースのトップページを見たときに「綺麗だけど、なんかスッキリしないなぁ」と感じたとしたら、原因はこれかもしれない。
省略を開始するまでの文字数をもうちょっと長くするという策もあるだろうけれど、最後まで言い切らないタイトルが残るという意味では根本的な解決にはならないだろうな。
タイトルの省略をやめて、長さによっては複数行にわたって表示するようにするか、あるいは、画面構成全体を見直して、横幅に関してもっと余裕を持たせた作りにしたらいいのに、と思う。

毎日、朝日、読売などの新聞社のサイトを見れば、記事のタイトルが尻切れトンボになっているサイトは一つもなく、オーマイニュースのサイトに比べると非常にゆったりとした作りになっているのがわかる。

毎日新聞社
http://www.mainichi.co.jp/
asahi.com:朝日新聞の速報ニュースサイト
http://www.asahi.com/
YOMIURI ONLINE(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/

記者が懸命になって考えたであろうタイトル、読者を記事へ誘う大切な見出しを、ちゃんと表示しない作りはもったいない。

「コメント」と「ひと言」。

各記事のページの画面一番下に、「ログインしてコメントを書く」というボタンと「『この記事にひと言』数」という、投稿されたコメントを読むためのリンクがある。

各記事に寄せられるコメントの事を「コメント」と呼ぶのか「ひと言」と呼ぶのか、統一されていない。サイト内の同一の概念には、同一の呼称を使ったほうが誤解が無くてよいと思う。細かい事だけどね。

コメントが表示される順番。

コメントの表示順は、新しいものが一番上に来るようになっている。コメントが投稿されてくる毎に、コメントの総体が上に伸びる形式だ。これ、2ちゃんねるのような順番になっていてほしいと感じた。記事に対する単なるコメントの列挙ではなく、記事にについての議論を読みたいからだ。

2ちゃんねるで使われている表示順に慣れているから、と言ってしまえば簡単だが、2ちゃんねるの「レス」の表示順(古いものが最初にきて、下へ読み進めるに従って新しいものがくる形式。コメントの総体が下に伸びる形式)には、コメント欄での議論、レスのやり取りでの議論を阻害しないという特徴があると思う。

下に伸びる形式

下に伸びる形式は、「文章は上から下に読む、書く」という人類全体が共有している文化に逆らわないので、コメントを書く人たちの間に、「他の人もこの順番でコメント欄を読むだろう」という予期を共有しやすい。みんなが同じ順序で読んでいるだろうという考えを持ちやすくなれば、他のコメントへの質問や応答、流れをつかんでいる人にしかわからないであろうコメントなどがしやすくなる。

上に伸びる形式

上に伸びる形式で作られたコメント欄では、それぞれのコメントがその流れの中ではなく、そのページの先頭に載っている記事に、直接ぶら下がる形でとらえられる。場の流れ、空気を読むためのコストが大きいので(いったん最初のコメントを探し、そこからスクロールバーを駆使してページを下から順に読まなければならない)「他の人もこの順番でコメント欄を読むだろう」という予期は生まれず、逆に「流れを読んでいるやつなんてあまりいないだろう」と考えられてしまう。
そうなると、コメント一つ一つが全くばらばらで別個のものだとみなされやすくなり、「この記事は糞だ」というような書き込みが何度も行われることにつながりやすい。「この記事は糞だ」と思った人が、同じ意見のコメントを見つけることができれば、「おれもそう思う、なぜなら・・・・・・」と議論を推し進める事ができるが、そもそも流れというものが無さそうなコメント欄を読み進めて、自分と同じ意見を見つけるのは苦痛だし、「そう思う」と書いたところで、「そう」とは「どう」なのか、他の人にわかってもらえるとは思いにくい。他の読者も流れをつかんでいるという自信が持てないからだ。そのような場では、「ではこの記事のどの点が、どういう風に糞だと思うのか?」と、議論を開始する事はバカらしくなると思う。

建築家的権力

逆にいうと、現在のオーマイニュースが「コメント欄で議論なんてしてくれるな」と思っているのなら、もっと積極的に建築家的権力を使って「各コメントはバラバラだ」と思わせるアーキテクチャを採用すればよい。
投稿されたコメントに番号を振ることをやめ、コメントの表示順を HTTP リクエストの度にランダムに変更する。そうすれば、コメントへのコメント、会話、議論というものを簡単に排除できる。「このコメント欄では議論はやめてください」なんて、ひとことも言わなくて済む。*1

通常の記事と「ニュースのたね」として掲載されている記事の区別をつけにくい。

トップページの最下部に、「ニュースのたね」というリンクがある。「ニュースのたねとは?」というリンクをたどると、次のように表示される。

「ニュースのたね」について
オーマイニュースOhmyNews)の掲載記事のうち、「ニュースのたね」ページに掲載されている記事は、オーマイニュースによる編集作業を経ていない、市民記者から投稿されたままの記事です。その点をご理解のうえ、お読みください。
皆さんの目に触れ、今後大ニュースとして芽吹いてほしいという意味をこめて、「ニュースのたね」のページに掲載しました。

オーマイニュースの記事へは、全員がトップページを介してアクセスするわけではない。チャットやメール等で記事の URL 受け取り、それを介して記事のページへ飛んでいく場合もある。そのようにアクセスした場合に、それがオーマイニュースの編集作業を経た記事なのかどうかが分かりにくい。(コメントを書くボタンがあるかどうかで判断できるということだろうか。)

その他

  • トラックバックを受け付けていない。
  • 一度に表示されるコメントの件数が少ないので、読み進めるのが手間だ。
  • コメントのみの表示が出来ない。
  • 記事に記されている記者の名前がリンクになっていない。「この記者は他にどんな記事を書いているのか」等を調べる事が出来ない。
  • 記事の検索が出来ない。
  • 重い。

2006年9月4日追記

  • RSS 配信をしていない。
  • 「ニュースのたね」の記事に、コメントを書くことが出来ない。

2006年9月5日追記

  • 特定のコメントを直接指し示す URL が存在しない。特定のコメントへのリンクが貼れない。

参考文献

創刊記者会見の動画が見れるサイト。

オーマイニュース(日本版)創刊記者会見
http://www.videonews.com/press-club/0607/000855.php

オーマイニュースユーザインタフェース、使い勝手に関してのコメントが、いくつか寄せられている記事。

「鳥越編集長、引退の危機!? ブロガー×オーマイニュース
http://www.ohmynews.co.jp/HotIssue.aspx?news_id=000000000617

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*1:「2ゲットズサー」という書き込みも、多分ほぼゼロにできそうだ。オーマイニュースで「2ゲットズサー」を見たことはまだ無いけれど。